大事に至らないのは運が良いというだけのこと
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先日、職場の2階にある事務所に用があったので階段を上がろうとしたら、階段の途中で同じ部署の女の子が片足を伸ばし座り込んでいた。その子が座り込んでいるところよりも上段に、その子の片方の靴が転がっていた。
とても苦しそうな表情をしていたので、誰がどうみても階段で転んでしまって動けなくなっている状態。
僕はその現場の第一発見者となった訳だ。
「だいじょうぶ!?どこか打った!?」
と声を掛けても激痛のせいか、ゆっくりと僅かに首を動かす程度の反応しか返ってこない。
これはまずい。
女性だし安易に担いだりはできないので、彼女に一声掛け、すぐさま事務所に駆けつけ上司に助けを求めた。ちょうど近くに女性の上司もいたので、声を掛け援助を求めた。
急いで救急箱を取り出し、数人で現場へ向かい、彼女に声を掛けたのだがやはり満足な返答がない。
不安になり見守りたいところだったが、ちょうど他の女性社員も通りかかったので、女性二人で肩を貸し、ゆっくりそこから近場にある一階の受付に運ぶことになり、僕は時間内に終わらせなければならない仕事があったので、そちらの方を頼むと言われ、仕事に戻った。
・・・時間が経ち、上司に彼女の安否を尋ねたところ、今は普通に喋れるし、足も動かせるので折れてはいないだろう、今は親御さんが迎えにくるのを待っているところ・・・だそうだ。
これには僕も、事態を聞いていた他の社員の子たちも一安心。
緊張がほぐれたからか、軽く笑みもこぼれ、瞬時に皆いつもの表情に戻っていた。
しかし、その上司の表情だけは曇ったままだった。
安堵して浮かれ始めた僕たちに、釘を刺すかのように上司はこう語り始めた。
「そんな軽く捉えていいものじゃないんだよ。今回はただ運が良かっただけ。実際うちの会社の他の店舗で若い子が階段で転んで頭を打って死んじゃったこともあるんだから。本当に気を付けなきゃダメなんだよ。」
今回は運が良かっただけ・・・この言葉にハッとした。
彼女は帰宅時間だったため、肩からバッグを掛けていた。なんでも、このバッグが顔面のクッションになり、そこまで大事には至らなかったそうだ。
たまたま肩から掛けてたバッグがクッションになったから良かったものの・・バッグがなかったら、もしかしたら・・。
彼女は階段で転ぶ数分前、わざわざ僕に元気よく「お疲れ様です」と挨拶をしにきてくれた。別に彼女に気がある訳ではないが、その挨拶はとても気持ちのいいものだったので、その笑顔は鮮明に記憶に残っている。
もし打ちどころが悪かったとしたら・・その挨拶が最後だったかもしれない・・・
考え過ぎかもしれないが、そう思ったらゾッとした。
“転んで痛い思いをしたけど骨折や大怪我をしなくて良かった”
・・それだけで済まされるほど、単純なものではないんだと思いました。
それから上司はこんなことも
「もうみんなヒールが高い靴禁止ね。」
確かに彼女が転んで座り込んでいた階段上部に転がっていた彼女の靴はとてもヒールが高い靴だった。それを見た瞬間、彼女に対する心配と同時に、原因はこのヒールのせいか・・と思ってしまった自分もいる。上司がそういうのも無理はない。
しかしこれについては、上司も厳重ルールにするような言い回しではなかったので、そう言われても高いヒールを履いてくる子もいるだろう。
・・・転んだ本人すらめげずに?履いてくる予感がしなくもないですね。
僕自身ファッションが好きなので気持ちは分かりますし、危ないから履くな、とも言えませんが、その場合は十分に注意して欲しいと思います。
“今回は運が良かっただけ”・・・上司のこの言葉に胸を打たれた者はあの中に何人いるのだろう。